2013年1月27日日曜日

金融緩和の理解には恒常的と一時的の区別が大事


金融緩和についていまだに本当にしょうもない悪意に満ちた批判が多いので、いちいち反論する。

金融緩和には中央銀行が誘導する恒常的なものと、その他さまざまな経済現象が引き起こす一時的なものとに分類できる。一時的ならデフレ脱出に意味はないが、恒常的なインフレなら効果があるといわれている。なぜ一時的ではダメで、恒常的な金融緩和なら消費や投資を喚起するのだろうか。

例えば日銀が恒常的な金融緩和を宣言して、「毎年」2%ずつインフレになるとしよう。つまり一年限りではなく、恒常的にインフレが続く状態を考える。そしてあなたは消費者としてそのことを良く知っているとする。あなたの所得が毎年100円で固定されているとすると、次の年はインフレ分を差し引いて98となる。次の年は98に0.98を掛けて・・・96.04と続いていく。

100→98→96.04→94.11→92.23→90.39・・・・・・・・

つまり恒常的に(毎年)インフレが続くと何もしないのに、どんどん自分の持っている所得、つまり円の価値がさがっていくのだ(あたりまえだが)。

この場合、消費者としてどう行動するのが合理的か。もちろん株や不動産や金などインフレになると価値が上昇していくものに円(紙幣)を換えていく。

なぜ株や不動産がインフレになると値上がりするのかというと、紙幣を刷れば紙幣の供給量が増えるが、株や不動産の供給量が増加するわけではないので、相対的に株や不動産の価値が貨幣に対して上がるからというのが一つ(というより刷った分紙幣の価値が下がる)。

もう一つはインフレになると消費者は円の一部を消費に回す。毎年インフレ分損するぐらいなら、今のうちに消費しておこうという合理的な判断である。したがって消費熱が高まるので企業業績がその分改善されて株価が上昇となる。企業も生産設備を増やし、そのための土地を取得するので、不動産価格上昇となるわけだ。

株価や不動産価格が上昇すれば、企業がもっている不動産の担保価値が高まり企業の資金コストは安くなるので、銀行や市場からお金を借りて、新規投資に回せるようになる。そうなれば人を新たに雇う。既存従業員の給与は上がり、新規に労働者を雇うので、その人たちの消費も上昇する。

つまりこういう流れだ。

金融緩和→期待インフレ上昇→株・不動産価格・消費意欲が上昇→資本コストダウン→新規投資上昇→雇用・賃金が上昇→期待インフレ上昇→株・不動産価格・消費意欲が上昇→資本コストダウン→・・・・・

これ以上簡単には説明できない(笑。

この金融緩和の経路をみればわかるが、金融緩和が即、賃金の上昇や雇用の改善に結びつくわけではない。しかし若干のタイムラグをはさんで、必ず雇用や所得を改善する。その経路の初期段階については皆さん既に株価の上昇を目撃しているわけだ。不動産価格、マンション販売件数なども序序に上昇していくだろうし、そのことは確認できるので問題ないわけだ。

もし消費者が金融緩和が恒常的ではなく一時的なものだと判断したとしよう。この場合所得が100→98になるだけでそこで止まってしまう。来年も再来年も金融緩和が続き、所得が目減りしていくという期待が働かないので、そこで金融緩和の経路が拡大再生産していかないのである。

円安で輸入品やエネルギー代金が高騰するというのも、それが"恒常的”であるなら期待インフレを上昇させるので景気に好ましく、一時的であるならば確かに家計をその分だけ苦しくさせる。

円安で輸入資源の価格が上昇すれば、その分国内物価に転嫁されるのでインフレ期待を上昇させるので望ましい。家計が圧迫されるというが、それは一時的な価格上昇は確かにそうだが、今回は恒常的な金融緩和から来る恒常的な価格上昇なので大変望ましい。

経済学のロジックを支えるのは経済活動を営む個人の「合理的な判断」を行うということ、そしてその判断は「政策を予測」しながら行われるということだ。そこが自然を対象とする物理学と違う点だ。

金融緩和反対派の主張を聞いていると、結局「期待インフレ」という変数を落として考えていることがよくわかる。

その人間だけが行う「期待」という変数を抜いた議論はもうたくさんだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿