2013年1月17日木曜日

NATO化するASEAN


ASEAN、いわゆる東南アジア諸国連合は、1967年タイのバンコク宣言で結成された経済連合であり、安全保障についての連合ではない。しかしEUをみてもわかるように、諸国連合がそれなりの力を発揮するためには経済連合だけでは不安定である。EUには安全保障連合であるNATO(北大西洋条約機構)がある。

案の定、ASEANは領土問題に関する対中国の対応で割れた。ベトナム・フィリピンが南シナ海について強硬な対中路線をとろうとしたのに対して、カンボジアがそれに待ったをかけ、インドネシアが仲介に乗り出したという構図だ。

そのASEANに対して、安倍政権は成立してまもなく安倍首相だけでな、く岸田外務大臣や麻生財務大臣をASEAN各国に派遣している。

今回安倍内閣が歴訪する東南アジア諸国を列挙すると、インド・インドネシア・オーストラリア・シンガポール・ブルネイ・ミャンマー・ベトナム・フィリピン・タイの総勢9カ国となる。すべて長大な海岸線を持つ海洋国家である。

これをみると、ものの見事にカンボジアが外れていることがわかるだろう。なぜカンボジアが外れているかといえば、冒頭でのASEANでの振る舞いだけではなく、地政学的立場が影響している。カンボジアは東西をタイとベトナムに挟まれ、北はラオスと国境を接している。南側がすこし海に接しているだけで要は内陸国なのだ。

ASEANは全会一致で決定されるので、政策合意に時間がかかる。安全保障上の連携にすべてのASEAN諸国が参加する必要はない。上記のような中国の脅威を真剣に捉えている国々と先行してすすめることが大事だ。

まずやるのは海上警備隊の整備である。東南アジアの警備隊は貧弱である。装備も訓練も人員も足りない。にもかかわらずそれなりの安全性が保たれているように見えるのは、アメリカやオーストラリアが代わりに海上警備行動を行っているからである。

なぜこのような政策が有効なのか。中国はその経済成長の源であるエネルギーを中東の石油資源に頼っている。経済成長が続くにつれその依存度は益々高まることになる。したがって中国は経済活動においても、軍事行動においても、中東からの石油にすべてを依存していくことになる。

その際中東から中国までのシーレーンをこれらの国々は押さえることになる。中国からの圧力に面した場合は、海洋諸国で連携してシーレーンを封じることで、戦争を抑止することが可能になる。

そして大事なことはこの封鎖力こそ、単独では中国に対抗できないASEAN諸国であっても、外交的に中国をけん制できる大きな抑止力の担保となるのである。そのためには、安全保障においても、ASEAN諸国は緊密に連携しなければならない。

日本は戦前朝鮮半島に進出することによって、拡張する国境線への多大な軍事負担に苦しんだ。地政学は海洋国家は大陸国家を兼ねることはできないと教えている。その教訓は海洋国家としての日本の立場を、もう一度確認し強化することである。

安倍政権は麻生政権の時に提案した"自由と繁栄の弧”(環ユーラシア海洋連合?)通りに外交を展開しようとしている。戦後において最も主体的かつ責任ある外交といえる。すなわち日本はASEANのNATO化のハブ(結節点)になろうとしているのだ。

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